最も基本的な機械的性能指標から見ると、10.9グレードの高強度ボルトの公称引張強度は1000MPaに達し、降伏強度は降伏強度比(0.9)から900MPaと算出されます。これは、引張力を受けた際にボルトが耐えられる最大引張強度が、その破断強度の90%近くになることを意味します。一方、12.9グレードのボルトは公称引張強度が1200MPaにまで向上し、降伏強度は1080MPaにも達し、優れた引張強度と降伏強度を示しています。しかし、すべてのケースにおいて、高強度ボルトが低強度ボルトを無差別に代替できるわけではありません。これには、いくつかの考慮事項が関係しています。
1. コスト効率:高強度ボルトは優れた性能を発揮しますが、製造コストもそれに応じて増加します。極端な強度要件が不要な場合は、低強度ボルトを使用する方が経済的で合理的です。
2. 支持部品の保護:設計段階では、ボルトの寿命を延ばし、分解・交換時のメンテナンスコストを削減するために、ボルトとナットの強度に意図的に差を設けることがよくあります。しかし、恣意的に交換すると、このバランスが崩れ、ナットなどの付属品の損傷を早める可能性があります。
3. 特殊なプロセスの影響: 亜鉛メッキなどの表面処理プロセスは、高強度ボルトに水素脆化などの悪影響を及ぼす可能性があるため、代替ソリューションを選択する際には慎重な評価が必要です。
4. 材料の靭性要件:厳しい交番荷重がかかる特定の環境では、ボルトの靭性が特に重要になります。このような状況で、高強度ボルトを盲目的に交換すると、材料の靭性が不十分なために早期に破損する可能性があり、ひいては構造全体の信頼性を低下させる可能性があります。
5. 安全警報機構:ブレーキ装置などの特殊な用途では、保護機構を作動させるには、特定の条件下でボルトが破断する必要があります。この場合、代替品を使用すると安全機能が損なわれる可能性があります。
まとめると、高強度ボルト10.9と12.9の機械的特性には大きな差があります。しかし、実際の用途においては、それぞれの用途の具体的なニーズに基づいて、総合的に検討して選定する必要があります。盲目的に高強度を追求することは、不必要なコストを増加させるだけでなく、安全上のリスクをもたらす可能性があります。選定したボルトが性能要件を満たし、構造物の安全性と信頼性を確保するために、各ボルトの性能特性と適用限界を十分に理解する必要があります。
投稿日時: 2024年8月8日


